2022シーズンを振り返る グランパスの現在地(前編)

2022シーズンを振り返る グランパスの現在地(前編)

長谷川健太監督を迎え、新たなスタートを切った2022シーズンのグランパス。リーグ戦は11勝13分10敗の8位、2021シーズンに優勝したルヴァンカップは準々決勝で、天皇杯はラウンド16でそれぞれ敗退し、タイトル獲得はなりませんでした。その要因はどこにあったのでしょうか? グランパスOBの増川隆洋さんに戦いぶりを振り返ってもらいつつ、守備力、攻撃力、総合力をA〜Eの5段階で評価してもらいました。

3バックへの移行で、リーグ最少失点の堅守を築く

守備力評価:B

現役引退後もグランパスの試合は欠かさずチェックしているという増川さんの目に、昨シーズンのグランパスはどのように映ったのでしょうか。まずは守備陣の評価から。

「フィッカデンティ前監督の時代とDFの枚数も守備のスタイルも大きく変わった中、リーグ最少タイの35失点に抑えた守備陣は評価されて然るべきだと思います。ただし、それが勝ち点に結び付いたとは言えないのでAはあげられません」。

2022シーズンの大きなトピックの一つが4バックから3バックへの移行。丸山祐市選手のケガからの復帰に合わせ4月17日の鹿島アントラーズ戦で3バックが採用されると、シーズン終了まで貫きました。1試合当たりの失点数は3バック採用前の7試合が1.29点なのに対し、採用後の28試合は0.03点と改善。数字的に見ると、3バックへの転換は確かに守備の安定をもたらしたようです。

とはいえ、「あわや失点」という危険なシーンが多く、2021シーズンほどの安定感は見られなかったと増川さんは指摘します。「2021シーズンは、相手ボールになったら選手が自陣深くまで戻り守り固めていましたが、2022シーズンはそれほど深くは引かず前からボールを奪いに行こうとした分、相手にDFラインの背後を突かれる回数が増えたように思います」。

それでも失点が少なかったのは、丸山祐市選手、中谷進之介選手、藤井陽也選手らのセンターバック陣にゴールキーパーのランゲラック選手と、能力の高い選手が揃っていたから。「グランパス守備陣はJリーグでも屈指のレベル。一番のストロングポイントです」。

目標に遠く及ばない30ゴールに終わる

攻撃力評価:E

長谷川監督は就任会見で「50ゴール決めないと優勝はない」と話していましたが、2022シーズンの総得点は目標に遠く及ばない30点。クラブのワースト記録となってしまいました。「1試合当たりの平均得点は0.88点。1試合に1点も取れないようでは、サポーターを喜ばすことはできません。攻撃陣には喝を入れないといけませんね」と増川さんの評価も厳しめです。

点が取れなかった理由の一つがストライカーの不在。攻撃の核として期待されたシュヴィルツォク選手がドーピング問題で出場できなかった上、サガン鳥栖から加入した酒井宣福選手もケガのため満足な活躍ができませんでした。結局、苦肉の策でトップに起用されたマテウス・カストロ選手が個人技で攻撃を仕掛ける場面が目立つことに。「相手DFのブロックの外でパスを回し、サイドからクロスを上げるというのが攻撃のパターン。ワンツーなどを使って中央から崩したシーンをほとんど見た記憶がありません」と増川さん。結果が伴わなかっただけに、攻撃陣への評価はどうしても辛口になってしまいます。

そうした中、停滞気味の攻撃陣を活性化させたのが夏に移籍加入した永井謙佑選手や重廣卓也選手。前線からの激しいプレスでボールを奪うとすぐさま攻撃に移るショートカウンターで相手ゴールを脅かしました。彼らの加入後に限ると、1試合当たりの得点は1.08点に増えています。現役の時代に一緒にプレーしたことのある永井選手について、増川さんは次のように話しました。「まさか名古屋に帰ってくるとは思わなかったので永井選手には驚かされました。彼のプレースタイルとショートカウンターの戦術が上手くフィットして、結果的に彼の補強は大成功でしたね」

とはいえ充実の守備力と比べて攻撃力は明らかな課題。さらなる充実が2023シーズンのカギとなりそうです。

期待が大きいだけに歯痒いシーズンに

総合力評価:C

特にリーグ戦では、一時期13位にまで順位を落としたことも。降格が頭をちらつく苦しい時期を乗り越えて、最終的には一桁順位でフィニッシュしました。

チームにとっても大きな誤算は新型コロナウイルス感染症の影響でまともにキャンプが送れなかったこと。1年間を戦い抜くための体力作りとベースとなる戦術の落とし込みが十分にできないまま開幕を迎えてしまった皺寄せが、リーグ戦8位という結果になって現れたと増川さんは分析します。「特に前半戦は思うような結果が出ず、僕も見ていて歯痒かったですね。やっている選手たちは相当に辛かったと思いますよ。とはいえ、どんな理由があるにせよ、グランパスは常にタイトル獲得が期待されているクラブです。これだけのメンバーが揃っているのに、残留争いに巻き込まれているようでは寂しすぎます」。

グランパスへの期待が大きいからこそ、増川さんの口調にも熱が帯びます。2023シーズンはタイトルを獲得し、増川さんの評価がオールAとなるような快進撃が起きることを期待しましょう!

後編では2022年に活躍した選手たちを振り返ります。

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