2022シーズンを振り返る グランパスの現在地(後編)

2022シーズンを振り返る グランパスの現在地(後編)

グランパスOBの増川隆洋さんと共に2022シーズンの戦いぶりを振り返る企画の後編をお届けします。前編では守備力・攻撃力・総合力に分けてチームの戦いぶりを評価してもらいました。後編では個々の選手の活躍ぶりにスポットを当ててもらいます。果たして増川さんは2022シーズンのMVPに誰を選んだのでしょうか。

(前編はこちら)

いずれは吉田麻也の後継者に 増川隆洋が選ぶ2022シーズンMVPは藤井陽也

「相変わらず安定感のあったランゲラックや本職ではないのにトップとしてチーム最多得点を挙げたマテウスなどの活躍も光りましたが、僕がMVPを選ぶとしたら今後の期待値を込めて藤井君ですね。まさかここまでできるとは思ってもいませんでした」

藤井陽也選手は、開幕から3戦目となる3月12日の川崎フロンターレ戦で先発出場を果たすと、その後もスタメンでの起用が増え、31試合に出場。完全にレギュラーの座を勝ち取りました。10月8日の京都サンガF.C.戦ではJリーグ初得点もマークしています。2021シーズンのリーグ戦出場試合数は5試合。そのうちスタメンで出場したのはわずか1試合しかなかったことを考えると、2022シーズンは藤井選手にとってまさに大きな飛躍の1年になりました。

「サイズがあって空中戦に強いし、カバーリングもそつなくこなしていました。ドリブルでボールを運ぶ技術もあって、平均点のとても高い選手だと思います。何より、慌てることなく自信を持ってプレーしているのが良いですね」と、増川さんは藤井選手のプレーぶりを絶賛。いずれは、2022FIFAワールドカップ カタールで日本代表のキャプテンとして活躍した吉田麻也選手のようになってほしいとの期待感を口にします。
「麻也とは2008年頃、一緒にコンビを組んでプレーしました。懐かしいですね。麻也も藤井君も、グランパスの育成で順調に育ってきたという印象で、タイプも似ています。その頃の麻也と比べると、藤井君の方が器用かな。麻也はとにかく意識が高かったです。海外で活躍するという目標に向かって常日頃から行動していました。藤井君も高い意識を持てば、麻也を超えるような選手になれると思いますよ」

現役時代は同じポジションだったこともあり、増川さんの藤井選手への思い入れはかなり強いものがありました。藤井選手のさらなる活躍に期待せずにはいられません。

誰にも真似することができないスーパーゴール 増川隆洋が選ぶ2022シーズンで最も印象に残るプレー

「9月3日のアビスパ福岡戦で永井が決めた無人ゴール…ではなく、8月19日のジュビロ磐田戦でマテウスが決めたロングシュートですね。見ている僕も気持ちが良かったです。味方にいたら、これほど心強い選手はいませんよね。相手のゴールキーパーからしたら、たまったものではないでしょうが…」

MVPに続いて2022シーズンで最も印象に残っているプレーを尋ねたところ、増川さんが選んだのは同年8月度のJ1月間ベストゴールにも選ばれたマテウス・カストロ選手のスーパーゴールでした。3年ぶりに声出し応援が解禁された試合ということもあり、グランパスファミリーの皆さんにも強烈な印象として残っているのではないでしょうか。

2022シーズンのマテウス選手はストライカー不在というチーム事情もあり、本職の右ウイングではなく、主にトップとして出場。チーム最多の8得点をマークしました。「シュート数79本はリーグ1位ですが、単独で持ち込んで遠目からでもどんどん打っていたという印象が強いですね。球離れが悪く、周囲の攻撃を促していたかどうかは疑問の残るところです。ただ、磐田戦のようなすごいゴールを見せられると、それも仕方ないのかなとも思いますが…。周りとうまく連動できたら、個人技ももっと生きるはず。いずれにしろチームには欠かせない選手です。2023シーズンは彼を中心にもっと厚みのある攻撃ができればゴールシーンはもっと増えると思います」

ランゲラック、稲垣は替えの効かない存在に

藤井選手の成長、マテウス選手のゴラッソのほかにも、2022シーズンで印象に残った選手やプレーを挙げてもらいました。

真っ先に名前が挙がったのはランゲラック選手。もはやチームに欠かすことのできない絶対的な守護神です。「1試合に1回はビッグセーブをしたという印象。リーグ最少失点を記録できたのは、彼がいたおかげです。ファン投票を基にシーズンの最優秀選手を決めるグランパスランクル賞にランゲラックが選ばれたのも頷けるほどの活躍を見せてくれました」

増川さんは印象に残るゴールの一つとして、2月19日のヴィッセル神戸との開幕戦で稲垣祥選手が決めた先制ゴールも挙げてくれました。「シュートのこぼれ球にしっかりと反応した稲垣選手らしいゴールでした。『今年もゴールを量産してくれるのでは』との期待が高まりましたが、相手に警戒されてしまいましたね。それでも豊富な運動量であらゆるところに顔を出し、ボールを奪うという本来のボランチの役割はしっかりと果たしてくれました。ランゲラックと同様に替えの利かない選手ですね。もっとボールを動かせるようになると、さらにチームへの貢献度が高まると思います」

ここで名前の挙がった選手は、来る2023シーズンも活躍してもらわないといけない選手ばかり。タイトル獲得に向けての巻き返しに期待しましょう。

そして最後にポルトガルリーグのカーザ・ピアACへ期限付き移籍をした相馬勇紀選手へのコメントをもらいました。まずはリーグ戦でのパフォーマンスについて「能力を考えると、シーズンで2得点は少なすぎます。もっと前でプレーできれば、良かったですね。そうすれば彼の良さは出たと思います」

2022FIFAワールドカップ カタールでは、コスタリカ戦に先発出場しましたが、持ち味の攻撃力を十分に発揮することはできませんでした。「相手が引いて守り、スペースがなかったので、良さを出しにくかったと思います。ワールドカップで不完全燃焼に終わったことが、海外への挑戦に結びついたのではないでしょうか。グランパスにとっては大きな戦力ダウンですが、日本サッカーのため『頑張れ』と言って背中を押してあげたいですね」

名古屋の相馬から世界のSOMAへ—大きく羽ばたくことを期待しましょう。

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