第1回『ひつまぶし』
目次
『ひつまぶし』 はなぜ名古屋でうまれたの?
ひつまぶしの誕生は、うな丼の「出前」がきっかけ?
ひつまぶしは、おひつ(ごはんを保存するときに使う器)に盛ったごはんに、短冊のようにきざんだウナギのかば焼きをのせた料理。1品で3通りの食べ方が楽しめる、名古屋の名物グルメです。名古屋市熱田区の料亭「あつた蓬莱軒(ほうらいけん)」からうまれた、とされています。
1873(明治6)年に創業した「あつた蓬莱軒」。当時のお店は、宮宿(みやしゅく・みやじゅく)という東海道五十三次の宿場町にありました。国内の主要都市を結ぶ通りにもうけられた休けい地点であり、宮宿にはいろいろな種類のお店が並んでいたことから、「あつた蓬莱軒」にもたくさんの出前の注文があったそうです。
ひつまぶしがうまれる前は、瀬戸焼(せとやき)の器でうな丼の配達をしていました。ところが出前を配達するたびに、食べ終わった後の器が割れてしまい、店の人が困り果ててしまったのだとか。そこで、大きなおひつに数名分のウナギとごはんを入れて配達をするようになりました。
しかし、数名分を一つのおひつに入れると、ごはんを残してしまう人も。考えをめぐらせた「あつた蓬莱軒」2代目店主の鈴木甚三郎(じんざぶろう)さんは、ウナギを細かく切ってごはんとまぜる方法を思いつきます!これが、ひつまぶしの誕生のきっかけでした。
この出前の方法が客や店員から評判を呼び、ついには店でもメニューとして出すように。さらに、「味や食感のアクセントがほしい」「最後のシメにお茶づけで食べたい」という客のリクエストに「あつた蓬莱軒」はこたえ続けました。
こうして、大きな「おひつ」に入れたごはんとウナギを「まぜる(まぶす)」ことから名付けられた「ひつまぶし」。客への“おもてなしの心”と気づかいから、現在まで続く名物がうまれたのでした。
ひつまぶしは1品で3通りの味が楽しめる!
ひつまぶしには、おいしく味わえるおすすめの食べ方があることを知っていますか?
全部で3通りの食べ方があり、4等分にして味わいます。
まずは定番の食べ方を試して、自分の好きな食べ方を見つけてみましょう!
ひつまぶしの食べ方
- しゃもじを使って、ひつまぶしを4等分にする
- 1杯目は、1/4の量を茶わんに盛りつけて、ウナギやタレの味をそのまま楽しむ
- 2杯目は、ねぎ・わさびなどの薬味をかける
- 3杯目は、薬味とダシをかけてお茶づけにする
- 4杯目は、3通りの中で1番気に入った食べ方で味わう
本場の「あつた蓬莱軒」で元祖ひつまぶしを食べよう!
「なごやめし」として全国で知られている、ひつまぶし。今では東海地方をはじめ、全国各地で食べることができますが、本場の味が楽しめるのは名古屋だけ。
「あつた蓬莱軒」に行って、元祖ひつまぶしを食べてみませんか?
「あつた蓬莱軒」のひつまぶしは、細かくきざんだウナギのかば焼きが、ごはんの上にびっしりと敷きつめられています。140年以上にわたってつぎ足された秘伝のタレや、備長炭(びんちょうたん)で香ばしく焼き上げる職人の技。はじまりの店だからこそ、長年受けつがれた味わいとこだわりが光ります。
名古屋に訪れたときには、ぜひ味わってみてくださいね。
ランランちゃんの
今日のまなび
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明治初期に宮宿で盛んだった「出前」をきっかけに、ひつまぶしが誕生した
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ひつまぶしは、「おひつ」と「まぜる(まぶす)」から名付けられた
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3通りの食べ方は、お客さんに寄りそう気持ちからうまれた
取材協力
あつた蓬莱軒
とれたてのウナギを使った、ひつまぶしが名物。熱田神宮の近くに、本店や神宮店があります。ひつまぶしがうまれた日本料理店として、140年以上にわたって、伝統の味を守り続けています。