
第8回『三重の伊勢うどん』
目次
なぜ「伊勢(いせ)うどん」は太くてやわらかい?
参拝客(さんぱいきゃく)への「おもてなし料理」
三重県伊勢市の名物「伊勢うどん」は、太くてやわらかい麺が特徴。とろみが強く独特の風味がある濃厚(のうこう)な「たまり醤油(じょうゆ)」と「だし」を合わせたタレは、まっ黒でからそうに見えますが、ほんのり甘(あま)さが感じられます。
伊勢うどんの歴史は、なんと400年以上!江戸時代に、農民が家庭で作った「みそたまり(みそを作るときに上にたまる液体)」をうどんにかけて食べたのがはじまりといわれています。その後、伊勢神宮の参拝客にもふるまわれるようになりました。
ほかのうどんに比べて、伊勢うどんの麺が太くてやわらかい理由は「参拝客へのおもてなし精神」です。伊勢神宮の近くのうどん店には多くの参拝客がおとずれるので、次々にうどんを出さなければなりません。すぐにうどんを提供(ていきょう)するためには、常に麺をゆで続ける必要があります。しかし、麺をゆで続けることでゆで時間が長く麺がのびてしまうことも。
そこで、長くゆでてものびにくい麺の太さが考えられ、おいしく食べられるように工夫されたそうです。また、長旅でつかれている参拝客への気づかいで、やわらかくおなかにやさしい麺に。こうして、麺に特徴のある伊勢うどんが生まれたのです。
当時は、一般的な「うどん」と同じよばれ方でしたが、作詞家の永六輔(えいろくすけ)さんが、あまりのおいしさにラジオ番組などで紹介(しょうかい)。これをきっかけに、1971(昭和46)年ごろから「伊勢うどん」とよばれはじめ、その名が広まったといわれています。
今では地元の人や観光客など、多くの人に親しまれているご当地うどんです!
伊勢うどんのきまり
- 麺の太さは、たて横計6mm以上
- 25分以上ゆでた麺を使用する
- たまり醤油がベースのタレ
※伊勢うどん協議会が定める「本場のこだわり伊勢うどんの店」登録基準より
※諸説あり
食べ方はひとつじゃない!実は個性豊かな伊勢うどん
実は、伊勢うどんにはいろいろな食べ方があるって知っていますか?店ごとにトッピングやだしに個性があるのも、長く伊勢うどんが親しまれてきた理由のひとつです。
基本の食べ方は、麺にタレをからめてきざんだネギをのせるだけ。そこに、たまごやきつね(油あげ)、肉、天ぷらなど、店ごとにトッピングが加えられます。なかには、チーズやめかぶといった、めずらしいアレンジもあるようです。また、かつお節やこんぶ、にぼしなど、だしのちがいでも店ごとの味が楽しめますよ。
伊勢神宮・内宮(ないくう)の門前にあるおはらい町では、伊勢うどんが楽しめるお店が多数あります。たとえば「岡田屋」の伊勢うどんは、とろみのある少しからいタレが特徴。たまごをトッピングして、味を変えて楽しむのもおすすめです。岡田屋ならではのメニューも多く、カレールーとタレが半分ずつかかった「カレー伊勢うどん」や、夏に食べやすい「冷やし伊勢うどん」なども。お気に入りのアレンジが見つかるかもしれません。
また、おはらい町の真ん中にある「おかげ横丁」内の「ふくすけ」では、三重県産小麦を使った自家製麺とかつお節やこんぶ、しいたけでだしをとった香ばしいタレの手打ち伊勢うどんが味わえます。昔ながらのふんいきもふくすけの魅力(みりょく)。えん台(外用の細長いこしかけ)で伊勢うどんを食べると、江戸時代にタイムスリップした気分が味わえますよ。
お伊勢参りの後には、ぜひ太くてやわらかい伊勢うどんを食べに行ってみてくださいね!
ランランちゃんの
今日のまなび
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「みそたまり」をうどんにかけて食べたのが、伊勢うどんのはじまり
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麺のやわらかさは、参拝客へのおもてなし精神のあらわれ
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食べ方をアレンジすることで、今も多くの人に楽しまれている
取材協力

伊勢うどん協議会
伊勢うどんの「伝統の継承」と「魅力の向上」を図るため、こだわりを持っておいしい伊勢うどんの提供を目指す伊勢市内の店舗を、「本場のこだわり伊勢うどんの店」として認定、PRしています。
ホームページ

岡田屋
1953(昭和28)年創業(そうぎょう)の伊勢うどん店。かつおだしに濃口(こいくち)醤油を加えたタレがかかる王道の伊勢うどんや、オリジナルのアレンジ伊勢うどんが味わえます。
参考文献
・伊勢市観光協会
https://ise-kanko.jp/focus/iseudon/
・公益社団法人 三重県観光連盟
https://www.kankomie.or.jp/season/article_176.html