
第9回『愛知の常滑焼』
目次
愛知県の常滑(とこなめ)焼ってどんな焼き物?
常滑焼の歴史は1000年以上前にはじまった!?
愛知県常滑市を中心に作られている「常滑焼」。常滑市がある知多半島では、鉄分を多くふくんだ「朱泥(しゅでい)」という土が採れ、低い温度でも焼き締まる(やきしまる、焼くことで土が固まる)性質から、壺(つぼ)などの大きな焼き物を作るのに適していました。このように良質な土が採れる地域(ちいき)だからこそ、焼き物の生産が盛んに行われてきたといえるでしょう。
中世から現在まで、焼き物の生産が続いている代表的な6つの産地は、「日本六古窯(にほんろっこよう)」とよばれます。越前(えちぜん)・瀬戸(せと)・信楽(しがらき)・丹波(たんば)・備前(びぜん)とならび、常滑はそのなかでも最も大きな産地とされています。
常滑焼の歴史は、現在から1000年以上前の平安時代末期までさかのぼります。 知多半島の丘陵地(きゅうりょうち、山地よりも標高の低いなだらかな地形)にあなをほって作った窯(かま)を使い、生産されていた焼き物が常滑焼のはじまりです。室町時代になると、知多半島全域にあった窯は常滑へと集まり、生産される焼き物は大型のものがほとんどをしめるようになりました。
常滑は海が近く、大型の焼き物を船で運びやすい地形でした。そのため、常滑港から日本各地へと運ばれ、常滑焼はだんだん全国へと広がっていきます。また、焼き物を生産する窯が進化したことで、大きな焼き物の大量生産ができるようになり、作られるものも食器などの日用品へと変化していきました。常滑焼ならではともいえる朱泥の焼き物は、江戸時代後期から生産されはじめ、明治時代以降(いこう)に機械化が進んだことでさらに発展(はってん)し続けたのでした。
迷路のような路地と空間で歴史にふれる
現在の常滑市には「やきもの散歩道」とよばれる観光スポットがあり、実際に使われていた窯や工場など、常滑焼の歴史が感じられる街なみが残っています。
常滑焼の特徴(とくちょう)である赤褐色(せきかっしょく、赤茶色)は、鉄分を多くふくんだ土を焼き上げることで現れる色合いで、約1000年以上も受けつがれてきました。あざやかな赤褐色におおわれた「土管坂(どかんざか)」は散歩道Aコースにあり、土管がずらりとならぶ独特な雰囲気(ふんいき)の坂道です。ここは映画(えいが)のロケに使われたこともあります。
ちなみに常滑市は、 縁起物(えんぎもの)として知られる「招き猫(ねこ)」の生産量が日本一! 「とこなめ招き猫通り」では大きなものから一風変わった見た目のものまで、さまざまな招き猫が見られますよ。
常滑焼の特徴
- 鉄分を多くふくむ土を使い焼き上げることで、赤褐色の色合いになる
- 基本的には釉薬(ゆうやく)をかけない素焼き(ねんどで作った器をそのまま焼いたもの)の陶器(とうき)として作られる
- 低温で焼き締まる土の特性を生かして、昔は壺などの大きな焼き物が作られた
- 高温で焼き固めることで素焼きの状態でも強度をもち、日常的な食器にも多く使われる
カラフルでかわいい、新しい常滑焼が登場!
常滑市では、焼き物の歴史や文化にふれる街歩きの観光はもちろん、常滑焼を実際に買えるショップや陶芸体験が楽しめるスポットもたくさん!
常滑焼の陶芸体験は種類も豊富なので、レベルに合わせて楽しめます 。初めての陶芸なら、できあがっている器に自由に色や柄(がら)をかく「絵付け」や、土を指先でのばしながら形を作る「手びねり」がチャレンジしやすいですよ。
また、これまでのイメージをがらっと変える新しい常滑焼を販売(はんばい)している「TOKONAME STORE(トコナメストア)」にも立ち寄ってみましょう。窯元(かまもと、焼き物を作る窯のある場所)の山源陶苑(やまげんとうえん)の「TOKONAME」シリーズなど、カラフルでかわいい見た目の常滑焼は、伝統工芸を身近なものに感じさせてくれます。朱泥よりも鉄分の少ない「白泥(はくでい)」という土を使い、顔料を加えることでカラフルな常滑焼ができるのだそうです。
「TOKONAME STORE」では、初心者でもかんたんな「たたら成形」という方法で陶芸体験も行っています。さらに、コーヒーなどのドリンクメニューが楽しめるコーナーも。
約1000年前から受けつがれる赤褐色の常滑焼も、時代に合わせて変化していく常滑焼も、形や色は違(ちが)えど常滑焼の製法でしか表現できない魅力(みりょく)がつまっています。常滑市に遊びに来たら、街歩きや焼き物めぐり、陶芸体験など、ぜひいろいろ楽しんでみてくださいね。
ランランちゃんの
今日のまなび
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常滑は「日本六古窯」のひとつで、6窯のなかでも最大規模の焼き物の産地
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知多半島で良質な土が採れたことから、常滑では焼き物が盛んに行われるようになった
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知多半島の丘陵地にあった窯で作られていた焼き物が常滑焼のはじまり