第10回『三種の神器 八咫鏡(やたのかがみ)』

第10回『三種の神器 八咫鏡(やたのかがみ)』

目次

伊勢神宮にある「八咫鏡(やたのかがみ)」って?

伊勢神宮

ランラン

「伊勢神宮」って行ったことある?

あるよ!2000年くらい前に建てられた、歴史のある神社だよね。三種の神器のうちの一つ、「八咫鏡」が祀(まつ)られているんだよ。

ワイファイ
ランラン

そんなに前からあるんだね!でも、八咫鏡ってなに?神社に鏡があるの?

そうだよ。日本の神社には、鏡が祀られていることが多いんだって。今日は、三種の神器と八咫鏡について学んでみよう!

ワイファイ

三種の神器は天皇(てんのう)も見たことがない!?

三種の神器

三種の神器とは、皇位(こうい、天皇の地位のこと)の証として皇室に代々受けつがれてきた「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」、「八咫鏡」、「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」という、3つの秘宝(ひほう)のことです。

ところが、三種の神器は天皇でさえ本物の姿(すがた)を見てはならないとされており、どのような姿なのかは、はっきりとわかっていないのだそう。その理由は諸説(しょせつ)ありますが、過去に草薙剣や八咫鏡をそばに置いたり、直接見たりしてしまったことで、次々と祟り(たたり)が起こったためと伝えられてきました。

天皇が住んでいる宮中(きゅうちゅう)には三種の神器がそろっていますが、本物は八尺瓊勾玉のみ。天皇の寝室(しんしつ)の隣(となり)にある「剣璽の間(けんじのま)」という場所に安置されています。宮中にある草薙剣や八咫鏡は「写し」や「分身」、「形代(かたしろ)」などと呼(よ)ばれることが多く、必ずしも本物と同じ姿をしているとは言い切れないとされています。

なかでも八咫鏡の「写し」は、宮中にある3つの社殿(しゃでん)のうち「賢所(かしこどころ)」と呼ばれる場所に、アマテラスオオミカミ(天照大御神)が宿るご神体(しんたい)として祀られています。そのため、新天皇が三種の神器を引きつぐ「剣璽等承継の儀(けんじとうしょうけいのぎ)」という儀式では、宮中にある八尺瓊勾玉と草薙剣のみが渡(わた)されることになっています。

では、本物の八咫鏡や草薙剣は、いったいどこにあるのでしょうか?実は、八咫鏡は三重県の伊勢神宮に、草薙剣は愛知県の熱田神宮にそれぞれ祀られています。

八咫鏡を祀る伊勢神宮は、内宮(ないくう)と外宮(げくう)をはじめ、全部で125の宮社からなる日本最大の神社。内宮には天皇の祖先とされるアマテラスオオミカミが祀られ、皇室とのつながりも深いことで知られています。

三種の神器にまつわる神話

  • 「草薙剣」…アマテラスオオミカミの弟であるスサノオノミコト(素戔嗚尊※)が、ヤマタノオロチを退治(たいじ)したとき、その尾(お)から出てきたと伝わる。別名「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」と呼ばれる
  • 「八咫鏡」…天岩戸(あまのいわと)に隠(かく)れたアマテラスオオミカミを誘(さそ)い出すために使われたとされる
  • 「八尺瓊勾玉」…八咫鏡と同じく、天岩戸からアマテラスオオミカミを誘い出すために使われたとされる

※スサノオノミコトの漢字表記は、『日本書紀』では「素戔嗚尊」、『古事記』では「須佐之男命」とさまざまあります

八咫鏡には神様が宿っている!

伊勢神宮_正宮

写真提供:神宮司庁

日本では古くから、神秘なものとされてきた鏡。剣や勾玉とともに、祭り(神様と人の交流のこと)に使われる道具として扱(あつか)われてきました。神社に祀られる神様には姿やかたちはなく、物や場所に神様が宿ると考えられています。そのため、神様が宿る物の一つである依代(よりしろ)が「ご神体」として祀られているというわけです。

伊勢神宮の内宮に、アマテラスオオミカミのご神体として祀られている八咫鏡。アマテラスオオミカミは、「天を照らす神」の名の通り、太陽のように万物(ありとあらゆるもの)を照らし、世の中の平和を守り、災いを防ぐ神様ともいわれます。そんなアマテラスオオミカミと八咫鏡にまつわる神話は、三種の神器と天皇の関係にも、深くかかわっているようです。

「天岩戸神話」によると、ある日アマテラスオオミカミは、弟神であるスサノオノミコトのあまりにひどいいたずらにおこり、岩の洞窟(どうくつ)である「天岩戸」に引きこもってしまいます。太陽にもたとえられるアマテラスオオミカミが洞窟に隠れてしまったことで、世界は暗闇(くらやみ)に包まれ、災いが次々に起こりはじめました。そこで、さまざまな神様たちが集まって、祭りやおどりでアマテラスオオミカミの興味を引き、洞窟の外に誘い出すために八咫鏡が使われたとされています。

また、奈良時代に成立した歴史書の『日本書紀』によると、アマテラスオオミカミは孫であるニニギノミコト(瓊瓊杵尊)が天下り(あまくだり、天界から地上におりること)をするときに三種の神器を渡し、なかでも八咫鏡を「この鏡は私を見るがごとくに祀れ」と命じたと伝わります。その後ニニギノミコトが結婚(けっこん)し、ニニギノミコトのひ孫がのちの初代天皇の神武(じんむ)天皇となったことから、八咫鏡はアマテラスオオミカミの子孫だとされる皇室に代々受けつがれるようになったのでした。

こうして八咫鏡は、伊勢神宮の内宮と、宮中の賢所の両方でアマテラスオオミカミのご神体として祀られてきました。そのため、宮中で祭りの儀式をとり行うときには、伊勢神宮でも同じく祭りが行われ、国民の平安と幸せをお祈(いの)りしています。

年間1500回におよぶ祭りが行われる伊勢神宮。参拝(さんぱい)時間内に行われる儀式のなかには、参道から見られるものも多いので、実際におとずれてみてくださいね。

ランランちゃんランランちゃんの
今日のまなび

  • 三種の神器は、天皇も本物を見ることができない秘宝

  • 本物の八咫鏡は伊勢神宮に祀られ、分身は天皇が住む宮中に保管されている

  • 八咫鏡は、神様であるアマテラスオオミカミを外に誘い出すために使われた鏡だった

取材協力

伊勢神宮 外宮

伊勢神宮
三重県伊勢市にある、125社から構成される神社。正式名称は「神宮」であり、起源はおよそ2000年前にさかのぼります。国内外から参拝者が「お伊勢参り」におとずれる、観光スポットとしても有名です。

ホームページ Facebook Instagram

参考サイト

・『知識ゼロからの伊勢神宮入門』(幻冬舎)
・『三種の神器 〈玉・鏡・剣〉が示す天皇の起源』(河出書房新社)

関連記事