半田の醸造文化

第15回『半田の醸造(じょうぞう)文化』

目次

寿司(すし)の歴史と愛知県半田市の深い関係とは?

ランラン

半田市って、昔から酢(す)や酒をたくさんつくってきたところだって本当?

そのとおり。かつては、寿司ブームのきっかけをつくった場所でもあるんだよ。

ワイファイ
ランラン

すごいね!でも、いったい何が寿司ブームのきっかけとなったのかな?

酢で有名な「ミツカン」が深く関わっているんだ。じゃあ今回は、半田の醸造(じょうぞう)文化について学んでみよう!

ワイファイ

半田で栄えた醸造文化が江戸へ

竹内 進コレクション

写真:竹内 進コレクション


江戸時代、船の出入りや停泊(ていはく)に都合の良い港として、海運業(船で荷物を運ぶ仕事)が発達した半田。酒や酢など発酵(はっこう)させた調味料を製造する醸造業がさかんになり、大きく発展(はってん)していきました。

半田でつくられた酒や酢は、大きな船で江戸や大阪に運ばれるように。そのときに使われたのが、半田運河です。当時の半田では大雨で洪水(こうずい)が起こりやすく、江戸時代後期に10年がかりで大工事。この工事によって全長 573m、全幅(ぜんぷく) 33mの現在の半田運河に近い姿(すがた)となりました。

1804(文化元)年ごろ、調味料や納豆(なっとう)などの製品を販売(はんばい)する「ミツカン」グループの創業者(そうぎょうしゃ)である初代・中野又左衛門(なかのまたざえもん)が粕酢の醸造を始めます。そして寿司に出合ったことで、半田の醸造文化は大きな転機をむかえることになったのです。

半田の醸造文化が寿司ブームのきっかけに

半田の醸造文化


又左衛門は20歳(さい)のころ、半田の有力な酒造家であった中野半左衛門家(なかのはんざえもんけ)の後継者(こうけいしゃ)の養子に入り、その後、後見人(こうけんにん、世話をする人)になりました。約20年間にわたって、幼(おさな)い後継者の成長を見とどけ、半左衛門家とは別れて新たな分家をつくることを許された又左衛門は、江戸を旅することに。そこで当時ちょうど流行しはじめていたのが、現在のにぎり寿司の原型である「半熟(はんな)れ」でした。

そのころ、又左衛門は現在の「ミツカン」グループの基礎(きそ)となる中野又左衛門家を築き上げ、酒造業と同時に酒粕(さけかす)を原料とした「粕酢(かすず)」の製造も行っていました。半熟れを食べた又左衛門は、寿司には米酢ではなく、自らがつくった粕酢の旨味(うまみ)と甘味(あまみ)のほうが合うと確信。また値段(ねだん)も米酢より安かったため、「誰(だれ)もがおいしい寿司を手軽に味わえるはずだ」という想いで半田に帰り、江戸で大量に重宝(ちょうほう)されることを見こんで本格的に酢づくりをスタートしました。

又左衛門の予想通り、米酢よりも粕酢のほうが寿司により合うと江戸でも評判が広まっていき、人気の寿司店がどんどん粕酢を使うようになりました。そして又左衛門の粕酢は、江戸前寿司にとって欠かせない存在(そんざい)となったのです。

 

粕酢と米酢のちがいとは?

  • 「粕酢」は酒粕を原料にしてつくられているため、米酢と比べて酸味が少なく旨味成分が強いことが特徴(とくちょう)
  • 米の旨味をそのまま生かした「米酢」は、ほんのりとした甘味とまろやかな酸味でさまざまな味わいを感じられるのが特徴

江戸時代の酢づくりと食文化を知ろう!

半田の醸造文化


半田の醸造文化、そして寿司ブームの立役者となった「ミツカン」グループがもつ酢づくりの歴史を学べるのが、「MIZKAN MUSEUM(ミツカンミュージアム)」です。展示(てんじ)を見るだけではなく、本物そっくりの寿司のにぎり体験などを通して、食文化にもふれることができます。

MIZKAN MUSEUM がある半田運河沿(ぞ)いでは、黒い壁(かべ)が特徴の「醸造蔵(じょうぞうぐら、酢づくりをする建物)」がズラリとならぶ景色を、今も見ることができます。

醸造業が始まった時代の雰囲気(ふんいき)を感じられる半田運河をながめながら、当時の景色やくらしぶりを感じてみましょう!

 

ランランちゃんランランちゃんの
今日のまなび

  • 半田の醸造文化は海運業の発展によって栄えた

  • 「ミツカン」グループの創業者である中野又左衛門がつくった粕酢が江戸時代の寿司ブームのきっかけをつくった

  • 又左衛門がつくった粕酢は、現在の江戸前寿司にも影響(えいきょう)を与(あた)える存在に

取材協力

半田市観光協会

半田市観光協会

ホームページでは、半田市のおすすめ観光・体験スポットを紹介(しょうかい)。グルメや宿泊施設(しゅくはくしせつ)を知ることもできます。アイプラザ1階にある「蔵のまち観光案内所」では、観光情報を発信するほか、レンタルサイクルの貸し出しも行っています。

ホームページ

MIZKAN MUSEUM

MIZKAN MUSEUM

JR 武豊線「半田」駅から徒歩3分、半田運河の近くの場所にあります。「ミツカン」グループや醸造の歴史にふれることで、酢の魅力(みりょく)や伝統、食文化を学べる博物館。見学は、インターネットで前日までの予約が必要です。

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